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中野重治全集〈第五巻〉歌のわかれ 街あるき むらぎも

中野重治全集
第5巻
筑摩書房
p417


美しい日本語を読みたいなと、ふと思って、そのときに思い出したのは、中野重治の文章である。
(藤沢周平の作品を読んでそう思ったのではなく、その前の話。)

それで、図書館から借りてきて、久々に読んでみた。

「歌のわかれ」「街あるき」「むらぎも」の3作品は、いずれも著者の自伝的小説だという。
そのうちの「むらぎも」は東京大学学生だった頃を描いた作品。

作者らしい丁寧な描写が随所にみられる。

「なんでもそのときは雨がふつていた。こまかい雨で、安吉は傘なしに歩いていた。正面からはいつてきた彼は、正面に大講堂をみて、黄葉した銀杏並木の下を、からだがまつすぐになるような調子で歩いて行つた……彼のまえにも後ろにも一人の人間も見えなかつた。ほそい雨は、空から、しずかにまつすぐに降つていた、いつものやかましい建築場のリヴェティングが、まつたく聞えなかつた、どこかには人がいるにちがいない。図書館にはいるはずだ。正面の詰所にも守衛がいたはずだ。病院には、医者、看護婦のほかに患者たちがいるだろう。しかし今は、そんなものを含んだまま、焼け残った建物、これから建っていく建物、並木、樹木、芝草、すべてが地面に直角になつてそのまま濡らされていた。ひろい構内全体が、休息しているというほどふやけてはいない、しんとしているというほど鋭くもない。そのままで濡らされている……。」
(p150)


ただ、作品の眼目は、大正天皇が亡くなり、昭和に移り変わる間の労働運動に関わった、著者をはじめとする学生たちの動きを自伝的に描くことにあったようで、左翼史的な時代背景をかなり詳しく知らないと、なにを言っているのかよくわからないところが多分にある。

芥川龍之介らしき人物の自宅を訪問する場面や、島崎藤村への批判が語られる部分があるが、これらも非常にわかりにくい。
この全集には注はほとんどついていないが、そういうものがあってもよかったのではないか。(といっても40年前に出た全集なので、いまさらいってもしかたがないが)。
葉山嘉樹について触れているところがあると後で知ったけれども、読んでいるときには全然気がつかなかった。

なにを言っているかが分かりにくくても、最後まで読ませてしまうのは作者の文章の力だろうが、でもまあ、どうせ読むなら、もう少しわかりやすいものを読むべきだったな。





このエントリーのタグ: 中野重治
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