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小さな英雄 ――ある回想録から――

ドストエフスキー
小沼文彦=訳
筑摩書房
ドストエフスキー全集第2巻
p261―296


ドストエフスキーの第13作。
1849年 28歳

「ニェートチカ・ニェズヴァーノヴァ」がドストエフスキーの初期作品群の最後で、彼の20代も終わると書いたが、まだ本作があった。
といっても、この年の4月にペトラシェフスキー事件に連座して逮捕されており、この作品は、ペトロパブロフスク要塞拘禁中に書かれた作品。

売れっ子作家から一転して、獄中の人物になったという環境の激変を考えれば、彼の人生のそれまでとは分けて考えた方がいいだろう。いわば、ドストエフスキーの第二期の始まりである。

「小さな英雄」「おじさんの夢」「スチェパンチコヴォ村とその住民」と作品は続くのだが、共通していえるのは退屈だということ。「小さな英雄」は、小品ということもあってまだしもだが、長くなるにつれてだんだん退屈になっていくのは困ったものである。

「小さな英雄」は、11歳の少年の目から見た人妻のロマンスを描いた作品だが、これまでのようなエキセントリックさはあまりなく、どこか夢から覚めたような、作者の落ち着いた筆致が感じられる。逮捕収監という不名誉な形ではあれ、狂騒的な刹那的な都会生活から引き離されたおかげではなかろうか。

ただ、なにもドストエフスキーが、誰でも書けるこんなものを書いてもしようがないという気がする。こういう作品はそこらへんにいるロマンス作家に任せておけばよいのだ。

もちろん、後年の作品を知っているからこそ、そう言いたくなるわけである。
ここしばらくは、自らの本領をまだ発見していない作家が、冗長でどこか筋違いの作品を悪戦苦闘しながら書き続けていくのを、こちらも我慢して読んでいかなければならない。


このエントリーのタグ: ドストエフスキー 小さな英雄
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