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二重人格

ドストエフスキー
小沼 文彦=訳
岩波書店
岩波文庫
p326


ドストエフスキーの第2作目。
1846年。作者25歳の時。

内容からすると、「二重人格」よりも「分身」の方がぴったり。
ドイツ語に直すとドッペルゲンガーだそうだし。

ゴーゴリ風の文体で書かれた作品という訳者の説明だが、前半はとくにそうなのだろうが、後半になると、主人公のモノローグに近くなり、不安と葛藤と焦燥にかられて暗鬱なペテルブルグを彷徨う主人公ゴリャートキンの内面描写は、後年の「罪と罰」のラスコーリニコフを思い起こさせる。

だが、デビュー作の「貧しき人々」の大好評に反して、この作品はさんざんな評価だったらしい。

ドストエフスキーは終生この作品を気に入っていたというから、もともとこういう病的な心理描写が好きでもあり、余人には真似できないという自負もあったのだろう。ドストエフスキーの魅力の一つである支離滅裂にのたうちまわる内面を描写する手法を、ここで発見したということもあるのかもしれない。

もちろん、作者も主人公も、まだ深淵に、地下に降りておらず、たんに地上を駆け回っているだけという感じ。
発表当時、冗長という批判があったそうだが、そのせいもあるだろう。

その一方で、すでにゴーゴリ的世界を抜け出て、現在の都市生活者の不安と幻想を持つゴリャートキンの心理的リアリティを、当時の感覚ではまだ理解できなかったということもあるのではないか。




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