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葉山嘉樹集-25 ⑰子を護る(2)

ジョージ・オーウェルはイギリスの社会民主主義者で、一時共産党に属したこともあり、出版する作品はいつも政府の検閲を受けて修正を余儀なくされていた作家であるが、そのかれもドイツとの戦争がはじまるやいなや、英国の一員として戦うためにあちこち奔走し、結果、BBCでアジア向け宣伝番組制作スタッフとして働いている。

かれは敵を倒すためには非暴力を唱えるのではなく、銃をとって戦うべきだと考える男で、実際スペインのフランコ政権を倒すために義勇兵として従軍し、喉に貫通弾を受けて九死に一生を得ている。
その影響で軍務には適さなかったが、可能であれば喜んで兵士として従軍しただろう。

だから母国が戦争になったら、たいていの人はそのために戦うのだ。家族や同胞が危機に陥っているとき、立ち上がるのをためらう人はまずいない。葉山嘉樹がここぞとばかり軍艦に乗りたがり、祖国の難に赴きたかったのも、家族や仲間たちのために、かれの若いころの船乗りとしての経験を少しでも活かしたかったといういごく単純な――純粋な思いからだったのだろう。

ただ問題は、その母国が、もともと倒すべき存在であった場合はどうなるか。
そういうふうに考えていた社会主義者たちにとってはどうなるか、ということである。

「1984年」や「動物農場」を書いたオーウェルは、スターリンの全体主義やナチスのファシズムと一貫して戦ってきた人であり、また、社会民主主義者として、イギリス帝国主義の反対者でもあったが――したがって右翼と左翼両方からの罵声を浴びた――この非常時に際しては、民主主義防衛のため、イギリス政府とともに闘うことができた。

では当の全体主義国家やファシズム国家の中にいる社会主義者や、社会主義者とまではいかないまでも、国家の方針に批判的な者はどうなるのか。

どうしようもない。
4年前に起った人民戦線事件でわかるように、反戦・反ファシズムを訴える者、あるいはそう思われる者は即刻逮捕である。
ヨーロッパの左翼陣営に連なるこのような思想の持主は国家的反逆者以外の何者でもない。かれらに生き延びる余地はない。また少しでも国家の方針に背く者に対しても、厳しい統制の網がかけられていた。

社会主義者であろうとなかろうと、こうなっては一緒である。
このような国内で生きていこうと思えば、国家の方針に従うしかない。
嫌だといっても、それはもうこのような時代にこの国に生まれあわせたのだから仕方がないではないか。

葉山嘉樹がこの時点でどれだけ体制批判の視点を持っていたのか定かではないか、それしかなければそうやって生きるしかない。そうやって生き、家族を養うべきである。

それに対して後世のわれわれが非難しても仕方がないことである。

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